お礼
「そうねー…じゃあ、お礼にちゅーしてくれたら、嬉しいわ」
悦子は「え」と声を上げる。
「ちゅーって……あの…くちづけ?」
確認するまでも無いけのだれども、つい確認してしまう。
「うん」
廊下の中ほどで立ち止まってしまった悦子を振り返って、大包平は笑う。
「えっちゃんたら、顔、真っ赤よー」
「う…」
頬を軽く突かれた悦子は一度俯いて、意を決したように顔を上げ、「ええと…その、お礼」と、遠慮がちに大包平の唇にそっと口付けた。軽く触れて、少し名残惜しそうにゆっくりと唇を離す。
「ふふ…じゃあ、お返しー」
と、嬉しそうに大包平が口付けを返して来たので、悦子は慌てた様子で首を竦めた。
「カネがお返ししちゃったら、お礼にならないよ」
「あら?」
そうかしら、と笑いながら大包平は悦子の髪を撫でた。
「そうだよ」
困り顔で、悦子は応じる。
「お礼なのにお返しされたら、お礼が出来てない事になっちゃう」
「んー…じゃ、もう一回やりなおす?」
苦笑しながら尋ねる言葉に、「カネからのお返しは無しで」と悦子が念を押すと、大包平はおどけた調子で両手を上げる。
その様子につられて少し笑いながら、悦子は大包平の衣の裾を掴んだ。
「さっきのお返しのお返しと、お礼に…」
確かめるように軽く口付けして、更にもう一度口付ける。
「ん」
口付けられながら大包平が悦子の肩を抱き寄せた所で、叫び声のようなものと、何かが転がるような大きな音がしたので、二人は驚いて唇を離した。
「あ…」
「あら…」
見ると大包平の親友である七星が、真っ赤な顔をして廊下に転げていた。
「もー、七ちゃんたらそんな所で転んで、どうしちゃったの?子供じゃないんだからー」
大包平が軽く突くと、七星は跳ね起き「お前…こ、こんな所で……何やって…!」と早口で怒り出すので、
「別に、ちゅーしてただけじゃなーい」
肩を竦めて大包平は「変なことなんかしてないわよねー」と悦子の髪を撫でながら言う。
「うん…?」
悦子はこくりと頷いた。
20130512
悦子が大包平さんに「お礼がしたいから何か言って?」と言った結果がこういう話。
「何かお礼したい」と悦子が言う前に、ひとつお話があるのですが、長くなると言うか…なんというか…いつか何か出来上がったら親御様方にご連絡してからで…。これを上げる前に、もう一本書いておかないと話が通じない所があるので、ううむ。
つまり単純にイチャイチャ部分がですね、描きたかったんです。大包平さんと悦子、何だかとても動かしやすいんです。色々お言葉に甘えて、すみません…(゜∀゜*)←
ツッコミ役と言うか、二人がちゅーしてても止める人が内親王家の方には居ないので、大包平さんの親友の七星さんまでお借りしました。この後、七星さんは大包平さんに夫婦のスキンシップについて色々突っ込まれたりしてるんじゃないかと思います(笑)。悦子はその横で七星さんのお嫁さんと一緒にほのぼのとお茶してるといいなと。
悦子はちゅーする時には照れるけど、人に見られるのは別に恥ずかしく思うわけじゃないんだよなー…と考えてて。一番最初の頃は、何に躊躇うのかって、「私がカネにそういう事してもいいのかな」って事だろうなと。悦子にとって大包平さんは大事な宝物みたいな人なので。「してもいいものなんだ」と納得したら、照れながらも嬉しそうにちゅーしてます。大包平さんと悦子はくっついてる度合は高い気がするのですが、さらっとイチャイチャしてるような気がします。多分、同性同士でキャッキャしてるノリに近いせいです。
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