恋するお題、二編。


 >内親王 斉子へのお題は『さみしがり屋のウサギさん・熱を帯びた瞳・心一個分の距離』です。


「だって、クリスマスなんだぜ!」
極端に丈の短い、サンタクロースの衣装を模したデザインのワンピースを手に、由比が声をあげる。
「その『だって』の意味がわかりません!」
同じように声を上げて、私は由比を睨む。
由比はイベントごとがある度に、どこかから見つけてきた「変わった衣装」を私や子供達に着せたがる。子供達は大喜びだけど、何故か私の分だけちょっと大胆な衣装が多くて、少し…いや、かなり恥ずかしい。
「大体、サンタクロースと言うのは男性でしょう!どうして私が、そんな…み、短いワンピースを…っ」
こんな時は、由比の考えている事がよく分からなくなる。心一個分くらいの距離を感じて、なんだか寂しくなって、私は俯いた。
「…よし、わかった!」
黙り込んだ私に何を思ったのか、膝を叩いて、由比が声を上げる。そして、熱を帯びた瞳で真っ直ぐに私の顔を覗き込む。
「じゃあ、サンタは俺がやるから、斉子は”さみしがり屋のウサギさん”コスで!」
「うさ…クリスマスと言えば、トナカイでしょう!」
呆れかえってツッコミを入れると、
「え!じゃあトナカイガールで!」
と、どこから見つけて来たのか、何故か水着のような姿でトナカイの耳と角をつけた外国人女性の写真を満面の笑みで差し出すから、
「…………」
思わずグーではり倒した私は、悪くないと思いたい。


*******

 >内親王悦子へのお題は『薬指に光る絆・小悪魔スマイル・猫みたいに甘えさせて』です。


髪を乾かして居間に戻ると、カネは膝の上に置いたノートパソコンとにらめっこしていた。私に気付くと少し笑って、自分の隣を軽く叩いて座るように促す。
隣に座ると「もうちょっと待ってね」と、視線をパソコン画面に戻して、空いてる左手でゆっくりと私の髪をなで始めた。
「ん、ちゃんと乾いてるわね」
確かめるように何度か髪の中に指を滑らせる。
「う…くすぐったいよ、カネ…」
その指から逃げるように頭を振って、笑いながらカネの肩に額を摺り寄せると、猫みたい、なんて笑われてそのまま左腕で抱き寄せられた。

カネの左手の薬指には、真新しい指輪が光っている。銀色でシンプルな、でもよく見たら洒落た珍しいデザイン。
私の左手の同じ場所にも、それと同じデザインの一回り細い指輪。
まだ少し夢のような気がして、けれど、見る度に夢じゃないんだと実感して頬が熱くなる。自分の手とカネの手を交互に見ながら、自分の指輪に触れてそっと笑う。

「…指輪が、どうかしたの?」
声がして慌てて顔を上げると、カネがいたずらっぽく笑ってこちらをじっと見ていた。
「お…お仕事してたんじゃないの?」
「んー?今、終わった。大体、えっちゃんがそんなに可愛い顔してるのに、仕事なんかしてる場合じゃないわよー」
言って、華のような笑顔で私の髪をくしゃくしゃと撫でると、今度は両腕で力いっぱい抱きしめられた。



20121122
いい夫婦の日に、お題を使って内親王家の夫婦小話。斉子と悦子。…因みに、斉子は悦子の母親です。
斉子は娘二人が生まれてからの夫婦、悦子は新婚さん夫婦。
ついったの診断で名前を入れて出たお題を元に書きましたが、全部の文言を入れようとすると、話に無理が出るのでニュアンスだけ使ったりもしています。

現代編の由比さんがなんだか段々とコスプレ魔になってしまってる…ような…(苦笑)
悦子の旦那様の大包平さんは普段の職業はダンサーですが、副業でイラストレーターみたいな事もしてて、その関係でパソコンを使用→お仕事中と言う意味でした。

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