初めてのお泊り保育から帰って来たその日、規子は「わたし、もうすぐ、４さいなんだから！ひとりでねるの！」と言い出した。どうやら少し年上のお姉さん達と、両親と一緒に寝る寝ないで大論争になったらしい。
　オロオロする悦子と、「あら、それもいいんじゃなーい」とニッコリ笑う大包平。
　結局、子供部屋に布団を敷いて、規子はその晩、初めて一人で寝ることになった。


「…大丈夫かなぁ…」

　ベッドの上に起き上がって、悦子は本日何回目になるか分からない台詞を口にした。
　横でファッション雑誌に目を通していた大包平が苦笑する。
「えっちゃん、それもう何回目？」
「だって…」
　いきなり一人で寝ると言い出すなんて…と、不安そうな顔で悦子はまた寝室のドアの方に目をやる。
　規子がお気に入りのぬいぐるみをお供に眠りについたのを二人で見届けて、何度か良く眠ってる様子を見たものの悦子は心配で寝付けないでいた。

「のりちゃんはしっかりしてるから、大丈夫よー」
　すぐ隣の部屋なんだし、と言って大包平は、なおも不安がる悦子の腕を引っ張って自分の胸に抱き寄せる。
「…寝る時に、こうやってぎゅーってすると、えっちゃんとの間にのりちゃんが居たのにねー。子供が大きくなるのって早いわね」
「うん。ちょっと、寂しいね…」
　大包平の胸に顔を埋めながら、悦子は寂しそうに呟く。

「んー、えっちゃんが寂しいなら、コウノトリにもう一人お願いしちゃう？」

「えっ…？」

　悦子が顔を上げると大包平の瞳がいたずらっぽく輝いていた。

「ふふ…今度はアタシが、産んじゃおっかなー」
　冗談めかした言葉に、悦子はクスクスと笑いだした。
「カネ、凄くおしゃれな妊婦さんになりそう…」
「ふっふー、マタニティ界にマタニティドレス大革命を起こすわよー」
　大包平も笑いながら、悦子の額に口付けた。赤くなりながら、大包平の頬にキスを返す悦子。更に嬉しそうに笑って大包平は悦子の唇に軽くキスを落とす。

「ん…」

　腕を伸ばして、悦子は大包平の背中を抱きしめた。


　と、規子の部屋から火のついたような泣き声が聞こえて、パタパタと小さな足音がしたかと思ったら寝室のドアが勢いよく開く。
　二人が驚いて目をやると、泣きべそをかいた規子が、ぬいぐるみを逆さまに抱きかかえて立っていた。

「ま、ま、まっくらで……だれも、いないの……ま…ママもパパも、いな…くて……」

　ぐすぐす泣きながら規子はぬいぐるみを放り出し、ベッドに潜りこみ、二人の間に割り込むと、悦子の胸にぎゅうとしがみついた。
「うん…怖かったね」
　くしゃくしゃになった規子の髪を撫でながら、悦子は「大丈夫だよ」と呟く。
　段々としゃくりあげる声が小さくなって行き、やがて寝息に変わった。

「…まだ一人で寝るのは、ちょっと早かったみたいねー」

　起き上がった大包平が、苦笑しながら涙と鼻水まみれの規子の顔を覗き込み、その柔らかな頬を突いた。

「うん」

　「んん…」ともごもご口を動かして、自分の胸に顔を摺り寄せる娘の様子を見ながら、悦子は規子の髪を撫でる。
　可愛い娘が一人で眠れるようになるのは、まだ少し先の事になりそうだ。

最近、ちびっこ規子が私の中でマイブームの時期の小話。 規子はかなりおませなちびっこで、いつも背伸びしたいお年頃。オシャレに関してはパパリスペクト。ママはもっとおしゃれすべきだと思っていたりして。そんな規子を慌てて悦子が追いかけてます。悦子は娘に対してはちょっと過保護。
従妹の済子とは一歳位しか違わないけど、ちょっとお姉さんぶってたりするといい。あと、済子の双子のお兄さんズは現代編では明日都さんと楽子の子でもいいなーと密かに思っていたりします。規子がお兄ちゃんが二人も居てちょっと羨ましいと思ってたりするといい（笑）。

悦子一家は、基本早寝早起きと言うイメージです。旦那様の公演があったり、悦子の仕事が立て込んでる時はちょっと遅くなるけど、出来るだけ日付が変わる前にはお風呂に入って、ベッドに入ってるような。お肌の為に早めに床につくのです。
三人で仲良くぎゅうとして寝ていそうです。多分、規子が大きくなっても月に何回かは三人一緒に寝ていそう。仲良し親子です。

「コウノトリに〜」と言うのは、悦子があまりにションボリしていたから大包平さんの冗談ですが（苦笑）。マタニティドレスはもうちょっとオシャレであるべき！と言うのは、本気で思っていそうです＾＾
今回、コウノトリが赤ちゃんを云々を調べてみたら、実際はシュバシコウと言うコウノトリ科の鳥のことなのだそうで…日本で絶滅種のコウノトリとはちょっと違う子なのだそうです。「シュバシコウが巣を作った家には幸運が訪れる」とも言うそうで、幸せの鳥みたいなものなのかなーと思いました。